こんにちは
先日は一般的なモデルでFIREの生涯収入、生涯支出の試算してみましたが、今日はFIREした場合に失われる将来収入がいくらになるかと、FIREで退職する時点でそれと同等の試算を確保しておくためにはどの程度の貯蓄率が必要か、試算してみました。
1.FIREする場合に失われる将来の収入
まずFIREした場合に失われることになる将来の収入について考えてみるために、前回同様に以下のモデルケースで試算してみました。
【収入の前提】
- 給与収入(手取り)は22歳から65歳まで。400万からスタートしてピーク時700万(額面約1000万相当)を想定。61歳以降は200万。総給与収入(手取り)は約2億3千万円。
- 退職金は60歳時点まで退職しない場合には2000万を想定。60歳以前に退職する場合にはそれ以降の給与の比率分を減額。
- 年金(手取り)は65歳まで退職しない場合には65歳以降84歳までの20年間180万円、総受給額3600万円を想定。60歳以前に退職する場合にはそれ以降の給与の比率分を減額。
その他にも早期退職すると健康保険料が自己負担になるなどもありますが、複雑になるので上記の3つの収入以外は除外しています。
試算した結果、各年代での将来の収入はおおよそ以下の額となっています。
22歳時点 2億8400万円
40歳時点 1億8000万円
45歳時点 1億4400万円
50歳時点 1億円
55歳時点 5600万円
これはその年齢以降も継続した65歳まで上記のモデル通りの収入得た場合の額になります。すなわち早期退職する場合には失われる将来収入です。
2.FIREする場合に失われる将来の収入の割引現在価値
上記で試算した金額は、将来収入がそれぞれ得られる時点での金額でしたが、将来の金額を試算する場合には、現時点の価値、いまいくら持っていたら将来のその金額と同等になるか金利を考慮して現在価値に割り引いて考える必要があります。以下に割引現在価値に計算し直したものをグラフ化してみました。
今回は金利(割引率)は4%を想定しています。
退職金、年金についてはそれぞれ積立のタイミングではなく受給予定のタイミングから早期退職時点までの割引計算になっています。
割引現在価値について
割引現在価値=将来価値÷(1+金利)^n (「^」は乗数、nは年数)
(例)
1年後の100万円の割引現在価値(金利5%)
1,000,000円 ÷ (1+0.04)^1= 約961,539円
10年後の100万円の割引現在価値(金利5%)
1,000,000円 ÷ (1+0.04)^10= 約675,564円
30年後の100万円の割引現在価値(金利5%)
1,000,000円 ÷ (1+0.04)^30= 約308,318円
試算した結果、各年代でのそれ以降の将来の収入のその時点での割引現在価値は以下の額となります。
22歳時点 1億1700万円(割引前の41.1%)
40歳時点 1億1000万円(割引前の60.1%)
45歳時点 9700万円 (割引前の67.6%)
50歳時点 7400円 (割引前の74.5%)
55歳時点 4600万円 (割引前の81.7%)
この計算から、例えば「40歳時点の1億1000万円」には、その後の想定される収入「1億8000万円を各年齢で受け取る場合」と同じ価値があるということがわかります。(40歳時点で今後の収入が予定されている年に満期がくる利回り4%の割引債をそれぞれの金額購入しておけば、元手1億1000万円で1億8000万円を受け取れるってことですね。)
これはまた、22歳時点でもし1億1700万円もっていれば、通常のサラリーマンの生涯年収、生涯労働、2億8400万円分と同等の価値があるともいえますよね。(もしそんな資産家の方がいればうらやましいですね。)
このグラフを見ると22歳から40歳まで将来の収入の割引現在価値がほぼ変化がない点は不思議な感じがします。これは若い時ほど収入が少ない時期の年数が増えて、後半の高収入部分に対する割引年数がどんどん増えるからではありますが、グラフで見ると何となくわかっても納得がいかないですよね。
これを「22歳時点での残りの労働に対する価値と40歳の時点での残りの労働に対する価値が同じってこと?」って考えるとさらに訳がわからなくなりますよね。これは40歳の時点での残りの労働に対する価値を同じ基準時点22歳時点まで割り引けば、22歳時点での残りの労働に対する価値よりももっと小さくなるって話だとは思います。
3.FIRE時点でそれ以降の収入同額を確保しておくための貯蓄率
それではその各年齢で早期退職した場合に、それ以降の収入と収入相当の資産を確保しておくための貯蓄率を計算してみました。
貯蓄率は給与収入(手取り)分に対する貯蓄として毎年の積み立て額の割合としています。ここで注意が必要なのは、今回はFIRE後にFIRE後にしなかった場合と全く同じ収入を確保するための試算なので、ここでの貯蓄は通常の貯蓄とは全く別に確保する必要がある点です。そのため今後これを「FIRE資金貯蓄率」としています。
また貯蓄でつくったFIRE準備資金に対しては毎年前年残高に対して4%の運用益を計上し、複利計算で貯蓄が増加するものとしています。
(支出を一定にするモデルでの試算も可能だと思いますが、今回は貯蓄率を一定として各貯蓄率で試算しています。)
試算した結果、各FIRE資金貯蓄率で、将来の収入の割引現在価値と同額の貯蓄を達成可能になる年齢は以下のようになっています。
FIRE資金貯蓄率10% 57歳時点
FIRE資金貯蓄率20% 53歳時点
FIRE資金貯蓄率25% 51歳時点
FIRE資金貯蓄率30% 50歳時点
FIRE資金貯蓄率35% 49歳時点
FIRE資金貯蓄率40% 48歳時点
FIRE資金貯蓄率50% 46歳時点
FIRE資金貯蓄率が20%から40%までの試算結果のグラフを見ると、65歳まで退職せずっと貯蓄を継続した場合の最終貯蓄金額は大きく異なります(当然比率が2倍違えば最終残高も2倍違う)が、将来の収入の割引現在価値と同額の貯蓄を達成可能なタイミングはその金額の差ほど大きく変わらないという点は実に興味深いですよね。
48歳から53歳まで5年がんばって働き続けるのであれば、FIRE資金貯蓄率が40%から20%に減らしても大丈夫ということになります。これは40歳超えると毎年残り期間に対する割引現在価値側が順調に毎年減り続けることの効果からですかね。
FIRE以降も働いていた場合と同じ状態を目指したFIRE資金の貯蓄のためには、通常の人がする貯蓄以外でFIREのための貯蓄をしないといけないと考えると、あまり過激な貯蓄率も難しいのが実情だと思います。そう考えるとFIRE資金貯蓄率20%で53歳時点というのは多くの人にとって結構妥当な目標になるのだと思います。またさらに余裕があればFIRE資金貯蓄率を高めれば早期退職年齢をより早めることもできます。
今回は金利(割引率)は4%を想定して試算しました。もしこの値を5%などと大きくすればもっと余裕が出るものと思います。また逆に金利(割引率)を2%程度にすれば厳しくなります。
また今回はインフレ率については触れていませんが、インフレ率を考慮した実質の金利(割引率)が4%の想定ということになるかと思います。
まとめ
今日はFIREした場合に失われる将来収入がいくらになるかと、FIREで退職する時点でそれと同等の試算を確保しておくためにはどの程度の貯蓄率が必要か、試算してみました。なんとなくわかっていてもグラフ化するといろいろ考えさせられますよね。
今回の前提は「FIRE以降も働いていた場合と同じ収入確保」としていますが、より早期退職タイミングを早めたい場合には、その前提も検討、調整の余地がある部分だと思っています。
引き続きFIREに向けていろいろ考えていければと思っています。
よろしくお願いいたします。
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